お子様のインフルエンザ治療薬、どう選ぶ?年齢別のおすすめと注意点
この記事の目次
はじめに:インフルエンザと診断されたら
「インフルエンザ陽性です」と伝えられると、親御さんは今の熱の辛さや、家族への感染など、心配事が尽きないと思います。
現在、インフルエンザにはいくつかの治療薬(抗インフルエンザ薬)がありますが、**「どれが一番効くの?」「うちの子にはどれがいいの?」**と迷われることも多いでしょう。
このページでは、お子様の年齢や症状に合わせた「お薬の選び方」をわかりやすく解説します。
1. ひと目でわかる!年齢別のお薬選びチャート
お子様の年齢によって、推奨されるお薬が変わります。「飲めるか・吸えるか」が大きなポイントです。
| 年齢 | 第一選択 (おすすめ) |
その他の選択肢 | ポイント |
| 0歳〜乳幼児 |
タミフル (粉薬・ドライシロップ) |
ー | 確実に飲める「飲み薬」が基本です。 |
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幼児〜 (未就学児〜9歳頃) |
タミフル |
イナビル・リレンザ (※上手に吸入できる場合) |
まだ「吸入」が難しいことが多いため、 飲み薬のタミフルが安心です。 |
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小学校高学年 (10歳〜11歳) |
タミフル イナビル リレンザ |
ゾフルーザ (※要相談) |
吸入薬も上手にできるようになります。1回で終わるイナビルも人気です。 B型インフルエンザの場合はゾフルーザを使用することを推奨します。A型はゾフルーザを除いた薬剤を推奨 |
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中学生以上 (12歳〜) |
全ての薬 | ー |
1回内服で済む「ゾフルーザ」を含め、ライフスタイルに合わせて選べます。 A、B型ともにゾフルーザ推奨。吸入薬も同様に推奨。特にB型はゾフルーザ推奨 |
2. 各お薬の特徴(メリット・デメリット)
① タミフル(飲み薬)

【特徴】 世界中で最も使われている標準的なお薬です。1日2回、5日間飲み続けます。
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メリット: 生後2週間から使えます。粉薬(ドライシロップ)があり、味が調整されていて子どもでも飲みやすいです。
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デメリット: 5日間飲み続ける必要があります(途中で熱が下がっても、ウイルスを出し切るために飲み切ることが大切です)。
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こんな子に: 赤ちゃん、幼児、吸入が苦手な子。
② イナビル(吸入薬)

【特徴】 容器に入った粉を「吸い込む」お薬です。
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メリット: 来院時にその場で1回吸入すれば治療終了です。飲み忘れの心配がありません。
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デメリット: 「大きく吸って止める」という動作が必要です。失敗すると薬が十分に入りません(やり直しができません)。
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こんな子に: 小学生以上で、上手に吸入できる子。1回で済ませたい場合。
③ リレンザ(吸入薬)

【特徴】 1日2回、5日間吸入するお薬です。
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メリット: タミフルと同じく5日間かけてじっくり治療します。A型・B型ともに安定した効果があります。
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デメリット: 5日間、毎日吸入動作が必要です。
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こんな子に: 10歳以上で、タミフル等の味が苦手な子や、イナビル(1回吸入)では不安な場合。
④ ゾフルーザ(飲み薬)

【特徴】 1回飲むだけで治療が完結する新しいお薬です。
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メリット: 1回飲むだけで済むので非常に楽です。ウイルスを減らすスピードが速いと言われています。
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注意点(12歳未満の方へ): 12歳未満のお子様の場合、体内で**「薬が効きにくい耐性ウイルス」が出現しやすいことが分かっています。そのため、日本小児科学会では「12歳未満には積極的に推奨しない(他の薬を優先する)」**という立場をとっています。
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こんな子に: 12歳以上の方。または、医師が状況を見て必要と判断した場合。
3. よくある質問 (Q&A)
Q. 熱が下がったら薬はやめてもいいですか?
A. 飲み薬(タミフルなど)の場合は、最後まで飲みきってください。
熱が下がっても体にはまだウイルスが残っています。ぶり返しを防ぐため、処方された日数は飲み続けましょう。
Q. 「異常行動」が怖いのですが…
A. どのお薬でも(薬を飲んでいなくても)、インフルエンザそのものの症状として異常行動が出ることがあります。
「急に走り出す」「窓から飛び降りようとする」などの行動は、高熱による脳への影響も考えられています。
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対策: 発熱してから2日間は、お子様を一人にしないようにしてください。また、窓や玄関の鍵を閉めるなどの対策をお願いします。
Q. 発症してから時間が経っていますが、薬は効きますか?
A. 抗インフルエンザ薬は、ウイルスが増えるのを抑える薬です。ウイルスが増えきってしまった後(発症から48時間以上経過)だと、効果は期待しにくくなります。
ただし、重症化リスクがある場合などは処方することもありますので、ご相談ください。
4. 登園・登校の目安
インフルエンザの出席停止期間は、学校保健安全法で決まっています。
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「発症した後、5日を経過していること」
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かつ「解熱した後、2日(幼児は3日)を経過していること」
この2つの条件を両方とも満たす必要があります。「熱が下がったから明日から行ける」わけではありませんのでご注意ください。
【まとめ】医師からのメッセージ
インフルエンザのお薬は「絶対に飲まなければ治らない」ものではありませんが、飲むことで「発熱期間を1日程度短くする」「辛い症状を和らげる」効果が期待できます。
一番大切なのは、お子様が**「確実に使える(飲める・吸える)薬を選ぶこと」**です。
診察の際、お子様の年齢や普段のお薬の飲み具合などを踏まえて、最適な治療法を一緒に決めましょう。
