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子どもの「風邪」と上手なお薬・ホームケアの話

はじめに:保育園の洗礼、そして繰り返す風邪…

新学期や入園シーズン、せっかく慣らし保育が終わったと思ったら、「お熱が出ました」と呼び出しのお電話…。よくある光景ですが、親御さんとしては心配ですし、お仕事の調整も大変ですよね。

実は、乳幼児は年間平均5〜6回、保育園に通い始めのお子さんならそれ以上の頻度で風邪をひきます。これは、まだ免疫の未熟な子どもたちが、ウイルスとの戦いを繰り返して「免疫」という武器を手に入れている証拠でもあります。

今回は、そんな「子どもの風邪」について、お薬の考え方や、お家でできるケアについて詳しくお話しします。


 

1. そもそも「風邪」ってなに?

医学的には「かぜ症候群」と呼ばれ、主に鼻やのどにウイルスが感染して起こる炎症のことです。 ここで大切なポイントは、**「風邪の原因の80〜90%はウイルス」**だということです。

  • ウイルス(Virus): インフルエンザ、RSウイルス、ライノウイルスなど。抗生物質は効きません。

  • 細菌(Bacteria): 溶連菌など。抗生物質が効きます。

風邪のほとんどはウイルスが原因なので、特効薬はなく、自分の免疫力で治すのが基本です。


 

2. 小児科で出すお薬の「本当の役割」

 

「風邪薬を飲めば早く治る」と思われがちですが、実は病院で処方するお薬(去痰薬、咳止めなど)は、「ウイルスを退治する薬」ではありません。 あくまで、症状を少し和らげて、お子さんが眠れたり水分を摂りやすくしたりするための「手助け(対症療法)」に過ぎないのです。

当院では、医学的な根拠(エビデンス)と安全性を重視し、以下のような考えでお薬を選んでいます。

 

① 抗生物質(抗菌薬)について

「早く治したいから抗生剤をください」とご相談いただくこともありますが、ウイルス性の風邪に抗生物質は効果がありません。 そればかりか、抗生物質を使いすぎると「耐性菌(薬が効かない菌)」を生み出し、将来本当にお子さんが細菌感染症(肺炎や髄膜炎など)にかかった時に、薬が効かなくなるリスクがあります。 医師が「細菌感染の疑いがある」と判断した場合以外は、抗生物質は不要です。

 

② 咳止め・鼻水止めについて

  • 咳止め(特に強力なもの): コデイン類などの強い咳止めは、呼吸抑制などの副作用リスクがあるため、12歳未満には原則使用しません。 咳はウイルスを外に出そうとする防御反応でもあるので、無理に止める必要がないことも多いのです。

  • こどもに処方される咳止めとしては、チペピジン(アスベリン®)があります。小児科外来でもよく処方されますが、チペピジンが小児の咳止めとして有効であるというエビデンスは限られています。
  • 鼻水止め(抗ヒスタミン薬): 鼻水を止める効果は期待できますが、同時に鼻水が粘っこくなって詰まりやすくなったり、熱性けいれんを誘発しやすくなる可能性も指摘されています。 当院では、メリットとデメリットを慎重に判断して処方しています。

 

③ 多くの薬を混ぜすぎない

「あれもこれも」と4種類以上のお薬を併用すると、副作用のリスクが上がると言われています。当院では**「本当に必要な薬を、最小限に」**処方することを心がけています。


 

3. お薬よりも効果的?「鼻水吸引」のすすめ

お薬に頼りすぎないケアとして、おすすめしたい一つの方法が**「鼻水吸引」**です。

赤ちゃんや小さなお子さんは、鼻呼吸がメインです。鼻が詰まると、おっぱいが飲めなくなったり、眠れなくなったりします。また、鼻水を放っておくと中耳炎の原因にもなります。 研究でも、鼻水吸引をした方が咳などの症状が早く治まるという報告があります。

  • 自宅でのケア: 市販の電動吸引器なども活用してみてください。お風呂上がりなど、鼻水が柔らかくなっている時がチャンスです。

  • クリニックでのケア: 自宅では取りきれない奥の鼻水も、医療用の吸引器ですっきり吸い取ることができます。「鼻水だけ」での受診も大歓迎ですので、遠慮なくいらしてください。


 

4. お家でのケア(ホームケア)のポイント

風邪を治す一番の薬は「時間」と「お子さんの免疫力」です。お家では、免疫が働きやすい環境を作ってあげましょう。

  • 水分補給: 熱がある時は脱水になりやすいです。食事は無理しなくて良いので、水分(経口補水液、麦茶、スープなど)をこまめに摂らせてあげてください。

  • お風呂: 「熱があるからお風呂はダメ」というのは昔の話です。高熱でぐったりしている時は控えますが、熱があっても活気があり、水分が摂れていれば、さっと汗を流してスッキリさせてあげても大丈夫です。

  • 部屋の加湿: ウイルスは乾燥を好みます。加湿器などで湿度を50〜60%に保つと、のどの痛みも和らぎます。


 

5. こんな時はすぐに受診を!(注意すべきサイン)

基本的には「3〜4日の発熱」は風邪の範囲内ですが、以下のようなサインがあれば、風邪以外の原因や重症化の可能性があります。早めにご相談ください。

  1. 呼吸が苦しそう(肋骨の間がペコペコ凹む、肩で息をする、小鼻がピクピクする)

  2. 水分が摂れない・おしっこが出ない(半日以上おしっこが出ない場合は脱水の危険)

  3. ぐったりしている(視線が合わない、あやしても笑わない、ずっと寝ている)

  4. 生後3ヶ月未満の発熱(38℃以上ある場合は、重症感染症の可能性があるため急いで受診を)

  5. 発熱が4日以上続く


 

医師からのメッセージ

お子さんが風邪をひいて苦しそうにしているのを見るのは、親御さんにとっても辛いものです。 「何かしてあげたい」という気持ちでお薬を希望されるお気持ち、とてもよく分かります。

しかし、大切なお子さんの体だからこそ、「効かない薬(抗生物質など)」による害を避け、「必要な手助け」だけを選択してあげたいと私たちは考えています。

風邪は、お子さんが強くなるためのステップです。 「この咳は様子を見ていいのかな?」「鼻水だけでも受診していいのかな?」 迷った時はいつでもご相談ください。一緒に乗り越えていきましょう。

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